好きこそものの上手なれ

好きなことは上達しやすく、嫌いなことは上達しにくいものです。たとえば、ある領域について「ものしり」な人を思い浮かべてほしいのですが、その人はその領域を愛しているはずです。魚が嫌いな魚博士というのは存在しません。最近思ったのですが、職場にもこの考え方は演繹できます。つまり、職場で上の地位に昇りつめる人は、その仕事が好きな人です(当然と言えば当然ですが)。僕は公務員をしているのですが、管理職と呼ばれるような地位には公務員的な仕事が好きな人が見事に集まっています。

何が面白いのかわからない公務員特有の事務作業に喜びを見出す人というのが確かに存在するのです(僕は生気を吸い取られてばかりですが)。ちなみに僕は経理という仕事をしていますが、経理をするにあたって従わなければならない様々な規則が存在します。財務関係規則やら財産規則やらがそれにあたります。なんの意味があるんだかわからない規則(公務員の事務作業を増やすためだけに存在しているのではないかとさえ思われる規則)が連綿と書き連ねられており、どちらも経理のバイブル的な書物です。それぞれの規則にはそれが制定されるに至った経緯があるはずで、制定当初にはひとつひとつの規則に制定者の思いが息づいていたのでしょうけど、今となってはそれを知る由もありません。とうの昔に骨抜きにされているのです(だからといって蔑ろにしていいわけではありませんが)。

僕はこうした存在理由のわからない規則を覚えるのが苦手です。内心では敵意すら抱いています。一方で、こうした規則を超人的な記憶力で余すところなく暗記している人が少なからず存在します。どうやらそういう人たちは、そもそも規則を覚えることが好きで、公務員的な事務仕事にやりがいを感じているようです。そういう人たちに規則について教えを乞うと、とても嬉しそうに教えてくれます。公務員的な規則が好きで、そういう規則に詳しい自分が好きなのです。でもなければ、あんなつまらない規則をいちいち記憶なんてしていられません。

どの仕事でもそうでしょうけど、一流になるのは、その仕事を愛している人です。公務員にしても、学校の先生にしても、郵便配達員にしても、銀行員にしても、医者にしても、トレーダーにしても、美容師にしても、その仕事の一流になるのは、その仕事を愛していて、その仕事をしている自分を愛している人です。愛していても一流になれない場合はあるでしょうが、一流の人はその仕事を愛している人です。つまり、一流になる条件は、愛せる仕事に就くことなのです。