『カリートの道』鑑賞

ブライアン・デ・パルマ監督の『カリートの道 (Carlito's Way)』(1993年)を観ました。またまたアル・パチーノを主演に据えたブライアン・デ・パルマお得意のマフィア映画です。ストーリー、カメラワーク、キャスト、いずれも洗練されたいい映画だったと思います。特にカメラワークには何回も唸らされてしまいました。内容は一言にまとめてしまえば、「やくざ稼業からは簡単に足を洗えないぜ」というよくあるものですが、筋書きが見事で最後まで楽しんで見ることができました。

時は1975年のニューヨーク。アル・パチーノ演じるカリートは5年の服役を経て出所するものの、義理人情もなくお金のために人を殺す堕落してしまったマフィアの生活に嫌気が差し、改心を決意します。しかし、そんな簡単にマフィアから足を洗えるものではありません。痛手となったのは、カリートが出所する際に弁護士に借りをつくっていたことでした。もともと30年の懲役だったところを、弁護士の尽力のおかげで5年で出所できたわけですが、このときにつくった弁護士への借りが、結果的にカリートの命を奪うことになります(このヤク漬けの悪徳弁護士を演じるショーン・ペンの演技も見事でした)。クリーンな状態で出所できなかったことが命取りになったわけです。

一度でも人を殺して恨みを買ってしまったら(たとえそれが不本意な殺人だったとしても)、何人もの人を殺さなければ収集がつかなくなるドツボにはまってしまう。一度嘘をついたら、いくつもの嘘を重ねなければ収集がつかなくなるのと同じです。カリートはもう一歩のところまで奮闘するのですが、多方面から恨みを買いすぎていました。この映画を見ると、日本のやくざが堅気に戻る前に「指を詰める」ほどの苦行を強いられるのも、さもありなんと思えてしまいます。それくらいにやくざ稼業というのは一度首を突っ込んだら足を洗うのが難しいのです。